ED(勃起不全)とは

ED(勃起不全)とは

勃起不全(Erectile Dysfunction)は、「勃起機能障害」、「勃起障害」ともよばれ、男性の性機能障害(Sexual Dysfunction)の一種であり、陰茎の勃起の発現あるいは維持のできないために満足に性交の行えない状態をいいます。

しばしばEDはSDと同一視されますが、SDは「性欲、勃起、性交、射精、オーガズムの一つでも欠けるか不十分なもの」と定義されており、EDはSDの一つに過ぎません。

EDに悩む人は先進国において男性人口の1割を占めるといわれ、加齢に伴い増加傾向にあり、日本では40~50代男性の半数がEDに悩んでいるという報告があります。
要因として、一つには糖尿病、うつ病、高血圧の治療薬が原因となることがあります。

先進国に多いことからも判るように、機能性EDの多くは、精神病やストレスなどの心因性で、交感神経の緊張により血管が収縮し、海綿体への血液流入が遮断されることによると考えられています。
EDの程度は軽症(たまに勃起できない)、中等度(勃起が充分でなく、時々性交ができない)、完全型(勃起しないため常に性交できない)に分かれます。

EDの種類

機能的(心や精神の問題)と器質的(身体の異常)に大きく分類されています。

心因性ED

心因性EDは現実心因と深層心因の2つに大別することができます。
日常生活における心身のストレスや社会的不安など心理的諸要因が原因でEDを引き起こす場合(現実心因)や、本人は意識がないものの、心の深いところの心理的原因でEDとなる場合(深層心因)があります。
現実心因は、パートナーの女性に言われた言葉が傷ついたり、毎日疲れている、経済的なストレスなどが挙げられます。深層心因の場合、幼児期の体験や性的なトラウマなどが要因となっているケースがあり、原因の解明までに長期間を要し治療が難しいことが多いようです。

器質性ED

器質性EDは加齢によるものと、生活習慣病によるもの、泌尿器科系の疾患、下腹部の手術や外傷によるものに大別できます。
加齢により起こるEDは、誰でも、速かれ遅かれ年をとると、やがてEDの症状がでてきます。
この原因は、年齢が上がるにつれて、血管や神経に様々な障害が起こるためですが、特に動脈硬化による血管障害はその原因のひとつです。
加齢に伴うEDは避けられないものの、中高年になってからも勃起機能を維持するためには、普段の生活からEDの原因となりうる病気の予防、生活習慣や嗜好性などに注意することが重要といえます。
生活習慣病により起こるEDは、糖尿病や高血圧、高脂血症などが原因となり、血管や神経が障害を受けて起こる混合型のEDです。
動脈硬化は生活習慣病と密接に関係しており、陰茎を通る動脈の動脈硬化が進むとEDが起こりやすくなります。
そのため、糖尿病、高血圧、高脂血症、心血管障害など血液循環に関連する生活習慣病を有する方はEDが起こりやすくなるのです。
一方、喫煙や過度の飲酒もEDを引き起こす原因と考えられています。

ED(勃起不全)の治療方法

治療薬の服用

器質性EDの治療法のひとつとして、治療薬を服用する方法があります。

代表的な治療薬として、認知度の高い「バイアグラ」やほかに「シアリス」「レビトラ」が上げられます。
「バイアグラ」はED治療薬として日本でも1999年に認可されました。
このED治療薬「バイアグラ」は、米ファイザー社の商品名(商標)で、一般名(成分名)はクエン酸シルデナフィルといいます。
元々、狭心症の治療薬として開発されたのですが、臨床試験を受けた患者の中にバイアグラを服用してから、勃起障害が治ったという患者が続出し急遽方向転換がなされ、画期的なED治療薬として生まれ変わったのです。
現在、「バイアグラ」は、医師の処方を受けて手に入れることが可能です。

「レビトラ」や「シアリス」は、「バイアグラ」が認可された後に販売が認可された新しい治療薬です。
成分的には「バイアグラ」とほぼ同様ですが、「バイアグラ」は服用するにあたっては空腹時を選ぶよう指示されていますが、「レビトラ」は食後でも服用が可能であったり、「バイアグラ」の効果時間が4時間に対し「シアリス」は36時間の効果時間があります。
これらの新薬は、日本では未だ知名度が低くあまり知られていませんが、今後はシェアを伸ばしてくることが予想されます。いずれもほとんどのED外来で処方してもらうことが可能です。

但し「バイアグラ」やこれらの治療薬は、個人によっては使用できるケースとそうでないケースがあります。
これらのED治療薬を服用しても病状が悪化する場合もあり、命に関わることもありますので、ED治療薬を服用するに当たっては、正しいED治療薬の知識を身につける必要があります。
他の病気が原因で治療薬が効かない場合もあり、特に生活習慣病の症状が酷くなると治療薬が効かなくなることもあります。

またこれらの薬は、健康保険が適用されません。必ず医師の相談のもと、服用して下さい。

治療薬服用のメリット 治療薬服用のデメリット
  • 服用することで即効性があり、手軽。
  • 長期服用で、更に効果が上昇。
  • 個人によっては服用できないことがある。
  • 健康保険が適用されない。
  • 副作用の危険性がある。

補助具による治療

器質性EDで、「治療薬が効かない」「治療薬が使用できない」の場合、陰圧式勃起補助具による治療法があります。
陰圧式勃起補助具の原理は、プラスチックの円形の筒の中に陰茎を挿入し、ポンプで吸引して筒の中を陰圧にすると、陰茎内に血液が吸い込まれて勃起状態になるという原理としては簡単なものです。
これらの器具は、ED治療の医療器具として臨床試験も終わっており、厚生省の認可も下りています。
この器具の特徴として、有効率が80%と非常に高く、またED治療薬のような経口薬でないため副作用の心配がなく安全だという点です。
この陰圧式勃起補助具は、厚生省の認可が下りているものが3種類販売されており、価格は5~8万円で購入することができます。

ただし、ED治療薬同様これらの器具も健康保険が適用されません。

陰圧式勃起補助具

補助具のメリット 補助具のデメリット
  • 副作用の心配がなく安全
  • 使用にあたり直前に10分程必要
  • めんどくさい
  • 雰囲気が台無しになる

ホルモン療法

男性ホルモンが減少することで勃起障害となっている場合には男性ホルモンの内服または注射をすることがあります。性欲の亢進も見られます。中高年では男性ホルモンの投与は前立腺がんの危険があるので注意を要します。
泌尿器医の判断が必要です。

海綿体注射療法(IntraCavernous Injecti)


陰茎海綿体に直接薬を注射し勃起を発現させる方法です。
注射薬にはプロスタグランジンE1,フェントラミン、パパベリンが使われることが多いのですが、プロスタグランジンE1の有効率は78~90%とされてます。
指導により自己注射もおこなわれています。
副作用としては持続勃起症、陰茎海綿体の繊維化、疼痛、皮下血腫、感染、その他があります。バイアグラの出現によりこの治療の行われる機会は減少しましたが、バイアグラ無効の患者さんに行われます。
薬に対する健康保険の適応はありません。

血管手術

動脈手術
陰茎の動脈が狭窄や閉塞を起こしてたことで勃起障害となっている場合、動脈の再建手術を行います。

静脈手術
陰茎海綿体からの血液の流出による勃起障害のの場合、その原因は静脈の問題ではなく、海綿体の問題ですが、静脈を結紮する手術を行うことがあります。

プロステーシス


陰茎海綿体内にプロステーシスと呼ばれるポリエチレンなどの芯棒を手術で入れる方法です。
陰茎海綿体を破壊し異物を挿入するため十分な治療前の検討が必要です。
器質性勃起障害の患者が適応です、ほかのすべての治療法をその前に実施する必要があります。
プロステーシスに対する不満は、陰茎が細い、小さい、冷たい、表面がやわらかいなどです。

カウンセリングによる治療


EDのうち心理的な諸要因によって引き起こされる心因性EDでは、カウンセリング(心理療法)がその治療の主体となります。
この心理療法は、一般心理療法と専門的心理療法に大別され、前者は支持的精神療法とも言われます。
これは、患者の悩みを良く聞いて理解し、患者の求めるところを十分に把握し、患者の心を支え、必ず良くなるという保証を与え、患者に回復への期待を与える手法で、最も基本的な心理療法です。
後者の専門的心理療法は、心因性EDの治療に用いられます。
夫婦間での喧嘩やトラブルなど日常の生活の場での現実的な心理的要因と、生育上の問題や心の奥底に潜む怒りや妬み、不安などの抑圧された感情や葛藤から起こった心因性EDの治療法です。
ただ、このEDの心理療法には問題が数点、存在します。

カウンセリングのメリット カウンセリングのデメリット
  • 薬や器具を使わず、患者に優しい
  • 心身的な治療の為、治療には時間がかかる
  • 診療報酬が安価なため、実施している病院が少ない

ED治療をする前に>